膵臓・胆管・胆嚢がん

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膵臓・胆管・胆嚢がん

医師紹介

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膵臓がん・胆管がん・胆のうがんとは

消化酵素の一つである胆汁は、肝臓で産生され胆管という輸送路を通って十二指腸へ分泌されます。胆管の途中には胆のうが繋がっており胆汁の一時的な保管庫になっています。また胆管は下部で膵臓内を貫いて十二指腸へ到達します。
従って膵臓、胆管、胆のうは解剖学的に非常に密接しており、この部分に腫瘍ができるとお互いに進展したり、また外科切除を考慮する場合には一括での切除が必要になるなど、常にひとまとめに考えなければいけない領域になっています。

膵臓、胆管、胆嚢イメージ

膵臓がんについて

膵臓は、後腹膜という体の奥深い場所に位置し、消化酵素の一つである膵液を産生する働きと、血糖を下げるインスリンを産生する働きがあります。全体を3等分して右側から膵頭部、膵体部、膵尾部と言います。大きさとして大体、膵頭部=膵体部+膵尾部です。膵頭部は十二指腸と密接しています。また膵尾部の先には脾臓(ひぞう)がくっついています。
膵臓がんは、非常に予後が悪い疾患として知られています。多くは発見時にすでに転移を起こしていて、半分の症例は手術も出来ない状態です。症状が出にくいため早期発見が難しいことと、血管やリンパ管が豊富でがん細胞が周囲に広がりやすく進行が早くなりやすいことが要因です。がんの増大で膵臓の機能が低下すると、インスリンの分泌が悪くなることがあります。糖尿病のある方が急に血糖コントロールが悪くなった場合は一度膵臓がんを疑ってみて下さい。
一方、膵臓内に粘液が貯留する膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)という疾患があります。嚢胞性膵腫瘍の一種でこれ自体は悪性ではありませんが、一部でがん化する場合があることが分かっています。通常は経過観察を行い、がん化の徴候を示す所見が出てくれば切除を行います。早期のがん切除が可能なため一般的に通常の膵臓がんと比較して手術後の予後は良好です。
また最近は神経内分泌腫瘍(膵NET)という疾患が増えています。これは「癌」ではありませんが、転移することがある悪性腫瘍の一つで、膵臓がんとして扱われます。ただ通常の膵臓「癌」と違い、非常にゆっくりと進展するため、切除できればほぼ治癒が得られます。

胆管がんについて

胆管は肝臓から十二指腸に連なる「胆道」で構成されており、解剖学的に肝内胆管、肝門部胆管、遠位胆管、十二指腸乳頭部と名称が分かれています。肝内胆管に出来たがんは原発性肝臓がんとして取り扱われます(肝臓がんのページを参照)。胆管に腫瘍ができると胆汁の通り道が狭窄します。それによって黄疸や肝機能障害が生じることで胆管がんが発見されます。ただその場合すでに進行していることが多く、やはり胆管がんも早期発見が難しいがんです。5年生存率は膵臓がんについで悪くなっています。

胆のうがんについて

胆のうは胆管の途中につながっており、胆汁を一時的に引き込んで貯蔵する倉庫のような存在です。一部は肝臓に接しています。食べ物が胃に流れ込んでくると収縮して中の胆汁を十二指腸に押し出します。また、胆石ができる場所としても有名です。
胆のうがんの場合、同時に胆石を合併していることがあります。胆石の治療で胆のうを切除したときに、たまたま早期の胆のうがんが見つかることがあり、その場合の予後は良好です。また胆のうは超音波検査で詳細に観察することができるため、検診などで胆のうポリープとして見つかることもあります。しかしいったん進行するとそのスピードは早く、胆のうの壁が薄いことから容易に周囲に広がってしまい、切除不能な状態になることもしばしばです。

膵臓がん・胆管がん・胆のうがんの治療方針

当院でのがん治療は基本的に各がんの診療ガイドラインに基づいて行われます。 まず腫瘍ががんであることを診断することが重要になりますが、胃や大腸などと違い、膵臓・胆管・胆のうは内視鏡で直接病変を観察することができません。当院では消化器内科医がERCPやEUSなどの手技を用いてがんの診断を行っています。また胆管狭窄で閉塞性黄疸を来した場合には、ステント治療を行って患者の容態を安定させ、その後切除が可能な症例を外科に紹介する流れになります。友愛会グループで保有するPET-CT検査を活用して転移病巣の有無を鑑別しています。
がんを完治させるためには腫瘍の完全切除が原則です。しかしながらこれらの部位ではすでに進行している症例が多いこと、さらに解剖学的に複雑で手術手技が高難度であること、また大手術となるため手術侵襲が大きく高齢者や合併症がある場合には耐えられないことなどが治療を難しくさせています。
また、膵臓がん・胆管がん・胆のうがんは手術ができても再発率が高いという特徴があります。検査で分からない微小ながん細胞が手術時にすでに他に散っていて、それが後から大きくなってきて再発ということになります。再発の予防、あるいは再発後の治療は主に化学療法(抗がん剤治療)になりますが、限定的な再発の場合には再切除や放射線治療も可能です。

膵臓がんの治療方法

膵臓がんの手術はがんのできた部位によって大きく二つの方法が挙げられます。膵頭部の場合は膵頭十二指腸切除術(PD)が、膵体部および膵尾部であれば脾臓合併膵体尾部切除術(DP)が標準術式になります。
まれに膵臓全体にがんが及ぶ場合には膵全摘術(TP)を行います。それぞれ所属リンパ節郭清を行い、近傍の臓器に浸潤が及べば合併切除して可能な限り病変の完全切除を目指します。特に膵頭十二指腸切除術(PD)は、切除範囲が膵頭部、肝外胆管、胆のう、十二指腸、所属リンパ節と広範囲におよび、腸管、胆管、膵管の切離後これらすべてを吻合再建するため長時間の手術になります。これは、腹部手術の中で最も難易度が高い手術の一つです。近傍の大血管に浸潤していれば血管の合併切除再建が必要になることもあります。
ただ膵臓がんの場合、手術単独での治癒率は20%もありません。しかし根治切除後にTS-1やゲムシタビン(GEM)などの追加の抗がん剤治療(補助化学療法)を行うことで5年生存率を24-44%に向上させることが分かっており、これが標準治療になっています。また近年、術前にTS-1+ゲムシタビンの治療(GS療法)を行ってから根治切除+補助化学療法を行うと、2年後の死亡リスクが28%低下することが新たに判明し、今後標準治療になっていくと思われます。
切除不能あるいは術後再発症例に対しては、4剤の抗がん剤を併用したFORFIRINOX療法や2剤併用のGEM+nabPTX療法(GnP療法)が生存期間を延長させる有効な方法です。また二次治療として最近3剤併用のNal-IRI/FL療法を用いることもあります。以前は転移や再発がある症例は治癒をあきらめられていましたが、最近は化学療法を組み合わせることで、転移・再発病変に対しても切除術を行い、治る可能性を追求しています。

膵切除

血管合併切除再建

胆管がんの治療

胆管がんも発生部位によって術式が変わります。肝門部胆管であれば拡大肝葉切除、遠位胆管であれば膵頭十二指腸切除術(PD)になります。肝臓と膵臓の中間に限局した小さな腫瘍であれば肝外胆管切除ですむこともあります。いずれも所属リンパ節郭清を行い、胆管空腸吻合術が必要です。

胆管がんも難治性のがんの一つで、進行がんの術後5年生存率は30%程度です。最近胆管がんの術後に補助化学療法として、TS-1を内服することで生存期間を延長するエビデンスが得られ、今後標準治療になっていくと思われます。

また切除不能あるいは術後再発症例に対しては化学療法(抗がん剤治療)になります。これまでTS-1、ゲムシタビン(GEM)、シスプラチン(CDDP)を組み合わせたGEM+CDDP(GC)療法、GEM+TS-1(GS)療法、GEM+CDDP+TS-1(GCS)療法などを行っていましたが、2022年に保険適応となったデュルバルマブ(Dur)を組み合わせたGEM+CDDP+Dur(GCD)療法の効果が期待されています。胆管がんの治療は長らく効果的なレジメンが少ない状況が続いていましたが、最近になって有効性を示す治療法が増えてきています。

胆のうがんの治療

胆のうがんは腫瘍の進展状況によって術式は様々です。胆石にたまたま併存する場合や胆のうポリープとして見つかる場合、胆のう摘出術のみを行うことが多いです(胆のうポリープは10mm以上の場合がんの確率が高くなるので手術をおすすめします)。
早期がんであればそれで根治の可能性が十分あります。進行がんの場合、肝床切除+リンパ節郭清を行います。当院では肝外胆管は基本的に温存しています。肝臓に浸潤している場合には肝切除を併施しますし、遠位胆管に及ぶ場合には膵頭十二指腸切除術(PD)を行います。
胆のうがんに対する補助化学療法の有効性を示すエビデンスはありません。また切除不能あるいは術後再発症例に対しては、胆管がんに準じた化学療法を行いますが、効果は不十分と言わざるをえません。
胆のうがん発症要因の一つに膵胆管合流異常症があります。これは膵管と胆管の合流形態の異常により胆汁と膵液が胆管内で混ざり合う病態で、胆のうがん発生の高リスクになります。膵胆管合流異常症が判明した場合には、予防的に胆嚢摘出術を行うこともあります。また胆管がんのリスクもあるので胆摘後でも長期的な経過観察が望ましいです。

当院の治療の特色

膵臓がん・胆管がん・胆のうがんの診断、治療には高度な医療手技が必要です。当院では消化器内科医と消化器外科医が定期的なカンファレンスを持ち、複雑な症例に対して多くの意見をもとに治療の方向性を検討します。最終的に治療方針の決定は患者・家族とのインフォームド・コンセントに基づいてなされます。また、他院からのセカンドオピニオンを受けることも多いです。
膵臓がん・胆管がん・胆のうがんの治療成績向上のためには、手術、化学療法、放射線治療などの集学的治療が重要になります。手術においては、150例以上の膵頭十二指腸切除術(PD)の執刀経験をもつ担当医が、高度進行がんであっても移植手術の手技を活かして積極的に血管合併切除を行い、がんの完全切除に挑んでいます。
化学療法ではがん化学療法認定看護師やがん薬物療法認定薬剤師の協力の下、最も効果的なレジメンを継続的に行える体制を作っています。
また当院では2021年から自施設での放射線治療が可能になり、局在する再発がんへの放射線照射や疼痛を和らげる緩和照射を積極的に行っています。これらの集学的治療を高いレベルで行うことが治療成績の改善につながると考えています。
さらに、治療が難しくなったり苦痛を伴う患者には緩和ケア専門医およびがん疼痛緩和認定看護師、臨床心理士などで構成するがんサポートチームが積極的に介入し、疼痛コントロールやメンタルケアを行ってADL、精神状態の改善を図ることで平穏な状態で過ごせるよう努めています。

当院は、難治性がんである膵臓がん・胆管がん・胆のうがんの患者さん一人ひとりの状態や希望に添った治療を行い、悔いのないがん治療ができるよう全力でサポートしていきます。

診療実績

当院では2023年までに308例の膵切除術を行っています。特に高難度手術とされる膵頭十二指腸切除術(PD)は211例を数え、県内でも有数の件数になっています。2009年以降の152例中、血管合併切除を行ったのは34例(22%)でした。

当院での切除術後の膵臓がん・胆管がんの全体の生存率はそれぞれ以下の通りです。
膵臓がん:2年生存率(61%) 3年生存率(33%) 5年生存率(20%)
胆管がん:2年生存率(59%) 3年生存率(50%) 5年生存率(35%)
(胆のうがんは症例が少なくデータ不十分のため割愛します)

当院では移植手術の経験をもつ執刀医が安全かつ高度な手術を行っています。
がんになってしまうことはとてもつらいことです。無理に闘わず緩和医療を行って残りの人生をできるだけ平穏に過ごすという選択肢もあります。当院では患者様一人一人の希望に沿った治療を行い、がん治療を全力でサポートしていきますので安心して受診してください。

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