先端医療研究センター

診療科・部門

先端医療研究センター

副院長 兼 先端医療研究センター長
加藤功大

当センターは前身の豊見城中央病院時代の2011年より細胞調整施設(CPC)を設置し、九州・沖縄地区有数の再生医療研究施設として大きな期待と役割を背負っております。
2013年度から2015年度にかけては、沖縄県による「医療基盤活用型クラスター形成支援事業」の採択を受けまして、沖縄赤十字病院、浦添総合病院、中頭病院の県内の3施設の民間医療機関と合同で、細胞の輸送を伴う、県内初の再生医療多施設共同研究を実施しました。
また2015年には沖縄県内の再生医療産業のより一層の拡充を視野に入れて、東京女子医科大学と5年間に渡る包括的な友好連携協定を締結し、東京女子医科大学が開発しました、「細胞シート工学」の技術移転を受けました。
そして2016年には当センターで提供する細胞シートを用いた治療が「国家戦略特区」の事業として指定を受ける事となり、現在、早期食道癌患者様に対するESD治療後の食道再生治療の臨床研究を長崎大学病院及び中頭病院と共同で実施しました。
当センターは再生医療等技術を用いた臨床研究に取り組んでいる全国でも数少ない民間総合病院として、来るべき再生医療分野の医療イノベーションに対して、すみやかに沖縄県民へこれを提供できることを目標として今後も活動していきます。

先端医療技術実用化促進事業【2019年度~】

社会医療法人友愛会友愛医療センターは、2016年度より沖縄県が実施する「先端医療技術実用化促進事業」を受託する事となりました。同事業は、沖縄21世紀ビジョンの基本計画で掲げる「アジアにおける先端医療拠点の形成」を見据えて、先端医療技術のさらなる集積・発展と研究水準の向上を図るため、先端医療分野の研究開発を推進していくプロジェクトとなります。この事業に対して友愛医療センターでは加藤功大先端医療研究センター長をプロジェクトリーダーとした「細胞シート治療実用化促進研究」をテーマに応募し、沖縄県により採択されました。
社会医療法人友愛会友愛医療センターは、沖縄県における再生医療実施体制の本格化を目指して、「細胞シート工学」を開発した学校法人東京女子医科大学と再生医療の臨床応用とその普及体制の構築を目的とした、包括的な友好連携協定を締結しております。「細胞シート工学」の特徴は、温度応答性ポリマーを培養基材にして固定化した表面を作製できる技術にあります。温度応答性ポリマーは、32℃付近以上で疎水性に、それ以下の温度では親水性となる特性があるため、培養時(37℃)では細胞が接着可能な疎水表面を維持することができ、培養後に温度を室温程度(20~25℃)に下げることで細胞を回収することができて、コンフルエントまで培養した細胞は細胞シート化して回収することが出来ます。細胞シートは身体のどの部位の細胞(細胞ソース)からも作製することができるという点が大きな特徴であり、多くの疾患に対しての治療手段として応用が期待できる再生医療のプラットホーム(基盤)技術と考えられています。

細胞シート工学技術の詳細

東京女子医科大学が開発した「細胞シート工学」は日本を代表する再生医療技術であり、既に心臓、角膜、軟骨などの疾患に対する臨床応用が進んでいます。食道再生の領域においてはこれまでに東京女子医科大学、長崎大学で早期食道癌の内視鏡切除の術後合併症を防止する目的で食道再生医療に臨床応用された後に、現在セルシード社による薬事承認を目指した治験が進行中です。


今回、友愛医療センター及び中頭病院において新たに取り組む臨床研究は、早期食道癌切除後の食道狭窄の治療を目的とした新規再生医療研究となります。早期食道癌に対してESDと呼ばれる内視鏡的一括切除術を施行された後に、食道狭窄の合併症が発症した患者様に対して、バルーンと呼ばれる食道の拡張術を行った後に拡張の際に生じた裂傷に細胞シートを貼付して食道狭窄の再発生を予防する事を目的とします。早期食道癌治療後の食道狭窄によって頻繁なバルーン拡張術が必要となり、QOLが著しく低下する患者様も多く、本研究において食道狭窄に対する予防対処策の一つとして適応が示せれば、食道狭窄に苦しむ多くの患者様に対して再生医療治療を提供できる可能性があります。
友愛医療センターと東京女子医科大学との間においては2015年に「友好連携協定」を締結して、食道再生の培養技術の移転を行ってきました。この食道再生に関わる培養技術移転は、今までノーベル生理医学賞の選考委員会を持つスウェーデンのカロリンスカ大学病院に対して実施例があるだけで、培養技術そのものの技術移転を伴う臨床研究としては国内では初となり、全世界においても2例目の事例となります。
また本研究の開始に向けては培養技術の移転だけではなく、細胞を培養する友愛医療センターから共同研究施設でもある中頭病院へ対しての細胞シートの輸送実験や、実際に細胞シートを内視鏡を用いて扱う医師の研修等も各施設で協力して取り組んできました

セル・プロセッシング・センター

社会医療法人友愛会 友愛医療センター 先端医療研究センターは再生医療技術を使った治療に用いる細胞を培養および加工する施設であるセル・プロセッシング・センター(Cell Processing Center)を保有しております。セル・プロセッシング・センターは細胞を培養加工するための高度な清浄区域を実現する設備と装置を有し、再生医療等安全性確保法の下で複数種類の特定細胞加工物を提供してきました。所属する職員は日本再生医療学会が認定を行っている臨床培養士を中心に構成されており、細胞を培養加工する部門(培養管理部門)と培養加工した細胞の品質を確認する部門(品質管理部門)のいずれかに配属され独立した業務を行うことで適切な培養加工管理体制を構築、維持しています。
友愛医療センター先端医療研究センターセル・プロセッシング・センターは再生医療等安全性確保法遵守の上、再生医療技術を使った治療へ高品質な特定細胞加工物を提供することで医療を通した社会貢献を果たします。

当院のセル・プロセッシング・センターと施設設備

細胞を培養加工する設備であるアイソレータ内を最も清浄度の高いエリア(グレードA)とし、アイソレータを設置する部屋(CPL)、前室となるガウニングルームを支援区域として清浄度管理をしています。

当施設から提供した特定細胞加工物

  • 口腔粘膜上皮細胞シート
  • 培養皿に敷き詰まった上皮細胞
  • 培養加工により得られた口腔粘膜上皮細胞シート
  • γδT細胞
  • 活性化し大きな細胞塊となったγδT細胞
  • 樹状細胞
  • 単球から誘導した未成熟な樹状細胞

日本再生医療学会 臨床培養士 在籍数

3名(2022年4月現在)

友愛会認定再生医療等委員会

現在、新規審査の受け入れは一時中止しております。