献腎移植への取り組み

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献腎移植への取り組み

当院は、2011年3月から献腎移植施設に認定され、2012年8月に第1例目の献腎移植を施行しています。献腎移植を受けるためにはあらかじめ日本臓器移植ネットワークに献腎登録を行う必要があります。現在沖縄県では県立中部病院、琉球大学病院、八重瀬会同仁病院、友愛会友愛医療センターの4施設が献腎移植を行える施設に認定されており、県立中部病院と友愛医療センターで新規登録をすることができます。

献腎登録について

献腎登録ができる条件

当院で登録を行う場合について説明します。まず透析施設で登録申請書類を用意してもらいます。その後、当院の地域連携室に電話して受診の予約を取って下さい。基本的に金曜日の午後もしくは土曜日午前になります。まずは移植コーディネーターとの面談を行い、大まかな説明を聞きます。その後、移植医から献腎移植について詳細を説明します。登録の書類作成のため、血液型、感染症、HLAタイピングを調べる血液検査が必要になりますが、HLAタイピングは予約が必要な検査ですので、後日施行します通常、毎月第3,4,5月曜日の朝になります。その日は採血だけで診察はありません。結果を元に、こちらで登録書類を作成し、日本臓器移植ネットワークに郵送します。この採血のとき、通常の検査料に加えて、HLAタイピング検査の費用25,000円を別途お支払いいただきます。ただし、このHLA検査費用については沖縄県腎臓バンクから20,000円の助成制度がありますので、そのための申請書類をお渡しします。最後に自分でネットワークに登録料30,000円をお振込みいただくことで登録が完了となります。登録後は毎年1回、移植施設を受診して登録の更新を行う必要があります。これは自分に適合するドナーが出て移植を行うまで継続することになります。
初回登録時にどこの施設で移植手術を受けるかを決めておきます。これは後から自由に施設を変更することが可能です。毎年登録更新の書類がネットワークから送られてきますので、自分が移植を希望する施設を受診して移植医のサインをもらって返送してください。この更新手続きは必ず移植施設を受診しないと完了しません。2年間更新がなされないと自動的に登録リストから抹消されますので忘れずに受診してください。また毎年更新料5,000円と採血検体を送る必要があります。待機期間が長期になると透析の合併症で体の状態が悪くなってきます。透析施設で定期検査を受けて体調を維持してください。移植医が手術できる体の状態でないと判断した場合、登録の更新ができないこともあります。

献腎登録の流れ

レシピエントの選定

登録後、献腎移植までの平均待機年数は現在14年9ヶ月です。手術の日は忘れた頃に前触れもなく突然やってきます。臓器提供を希望するドナーの方が現れると、ネットワークに連絡が入り、レシピエントの選定が始まります。種々の条件をポイント化し、優先度の高い順にレシピエントリストが作成されます。お一人のドナーから二人のレシピエントに腎臓が移植されますので、上位2名が移植を受けることができます。

現在、献腎移植のレシピエント選定基準は以下のようになっています

  1. 前提条件
    1. (1)ABO型血液型が一致もしくは適合すること
    2. (2)リンパ球交叉試験が陰性であること
    3. (3)1年以内に更新手続きがなされていること
    4. (4)C型肝炎要請ドナーの場合は、C型肝炎要請レシピエントのみ対象となる
  2. 優先順位
    1. 以下のポイントの合計が高い順
    2. Ⅰ 県内の患者12p 同じブロック(例えば九州沖縄地区内の患者)6p
    3. Ⅱ HLA適合度 0~14×1.15p
    4. Ⅲ 待機日数(N)N<4014:N/365p N>4014:10+log1.74(N/365-9)p
    5. Ⅳ 16歳未満 14p 16-19歳 12p
  3. 具体的選択方法
    1. (1)親族優先提供の意思表示がされている場合は、まず当該親族が優先される
    2. (2)ドナーが20歳未満の場合、20歳未満のレシピエントを優先する
    3. (3)血液型は適合より一致のものを優先する
    4. (4)2.の合計ポイントが高い順

常に上位2名の方が移植を受けられるわけではありません。リスト上位でも当日体調不良で入院していたり、合併症が悪化して治療中である場合は、移植医が手術には不適当と判断する場合もあります。また当日に本人とどうしても連絡がつかないために、次の人に順番が回ってしまうこともありますので(臓器の保存に時間制限があるため早くレシピエントを決める必要があるため)、必ず連絡が取れる番号を登録してください。夜中に電話がかかってくることが多いです。

「献腎移植までの手術の流れ」については、下記リンクページでも詳細がわかります

献腎移植が決まったら

ネットワークではリストが作成されると、その上位者が登録する移植施設の移植医にまず連絡を取ります。その後、移植医から登録患者に手術を受けるかどうかの意思確認の電話が入ります。その際、最近の体調と1年以内の輸血の有無について確認します。手術希望であれば、直ちに移植病院を受診することになります。(献腎移植は緊急手術です)急いで手術のための検査を行い、必要であれば透析を行います。医師から手術の説明を受け、移植の意思にゆるぎなければ免疫抑制剤の内服を開始して、臓器が搬送されてくるのを待ちます。臓器の摘出はドナーの方が亡くなったあとに始まります。従って、いつ移植手術になるかはわかりません。入院して直ちに手術になることもあれば、しばらく待つ場合もあります。
移植手術そのものは生態腎移植の場合と大きくは変わりません(生体腎移植:レシピエント手術の項目参照)。ただし、ドナーの死戦期に腎臓がダメージを受けていることが多く、移植後腎機能が回復するのに時間がかかります(Delayed graft function:DGF)。生体腎移植であれば移植直後から尿が作られ、透析は不要になるケースがほとんどですが、献腎移植の場合、数日から数週間は透析をしながら尿が作られるのを待つことになります。稀にですが、最後まで腎機能が回復せず、移植をしたものの透析から離脱できないこともあり、これをPrimary non function:PNFといいます。ドナーが高齢であったり、死戦期でのダメージが大きすぎたりする場合に見られることがありますが、これを予測することは大変難しいです。当院ではこれまで14例の献腎移植を行いましたが、透析離脱できなかった方はいません。いったん移植を受けると献腎登録のリストからは自動的に削除されます。移植後腎機能が廃絶して再度献腎移植を希望する場合は、また最初から登録して順番待ちとなります。ただPNFの場合には、そのまま待機が継続されます。

献腎移植の現況

現在献腎移植を希望してネットワークに登録している人は全国で約12,000名います。一方、臓器提供をされる方は年間約100名程で、献腎移植の件数は毎年200件ほどです。本邦での腎移植件数は年々増加していますが、生体腎移植の増加によるもので献腎移植の件数はほとんど増えません。そのため献腎移植の待機期間がどんどん長くなっています。現在は10年以上待たないと移植が受けられない状況です。ちなみに当院での献腎移植14名の平均待機年数は18年でした。

当院の腎移植件数の推移