臓器提供促進への取り組み

診療科・部門

臓器提供促進への取り組み

献腎移植を推進するにはドナーの増加が不可欠です。当院では院内での臓器提供促進にも取り組んでいます。ただし、この臓器提供活動は移植を待つレシピエントのためだけに行なっているのではありません。

移植に関する4つの権利

移植については患者の4つの権利が保証されています。それは、ドナーの臓器を提供する権利、臓器を提供しない権利、レシピエントの移植を受ける権利、移植を受けない権利。そのどれもが正当な権利であり、守られるべき権利です。この中で、ドナーの臓器を提供する権利が十分保証されていない場合があります。臓器提供は生前の患者の意思もしくは家族の希望で行なわれます。しかし、通常臓器提供が行なわれる状況は、患者および家族にとっては不慮の出来事であり、まずは救命に全力が尽くされます。「死」という事態は容易に理解できる状況ではありません。その中で医療にも限界があり「死」が不可避となった時、その現実を家族に説明します。その場合に、臓器を提供する権利が発生しますが、通常家族に臓器提供を考える余裕はありません。事前に明確に本人が意思表示している場合を除いて、医療者側から家族に意思を確認してあげないと、この権利は保証されないことになります。これをオプション提示といいます。もちろん断るのも提供するのも全くの自由であり、何の束縛も受けません。また断ったことで現在の治療に影響を受けることもありません。しかしオプション提示によって臓器提供にいたるケースもあり、最後に患者の希望を叶えてあげることにもつながります。臓器提供は脳死下での提供と心停止下での提供があり、どちらも選択できます。ただし法的脳死判定ができる体制が整っていない施設の場合、脳死下での臓器提供ができない場合もあります。心停止下の提供は、手術設備がある施設であればどこでも可能です。

移植に関する4つの権利

当院での取り組み

当院では、患者の臓器提供の権利が損なわれないように、適応のある患者にはもれなくオプション提示(意思確認)が行なわれるように配慮しています。しかし担当医から臓器提供の意思確認を切り出しにくいこともあります。その場合、沖縄県が作成したオプション提示のパンフレットを家族に渡すだけですむようにしています。また新しい健康保険証や運転免許証の裏面にも意思確認の項目がありますので皆さんも一度ご確認ください。全国世論調査では国民の約4割が死後臓器を提供してもよいと答えています。しかし年間の提供者が100名に満たないのは、現場できちんと意思の確認が出来ていないことが原因の一つと考えられます。臓器提供が増えれば、それで命を救われる患者さんがたくさんいます。当院では脳死下、心停止下どちらの提供も可能です。

臓器提供の実際

残念ながら最善を尽くしても救命できないとなった場合、医療者が患者にしてあげられる最後のこととして臓器提供の希望を家族に確認します。もし患者本人の意思が不明でも家族の希望があれば提供は可能です。当院では脳死下でも心停止下でも臓器提供が可能であり、家族の要望に沿います。臓器提供希望もしくは前向きに考えたいという場合、病院は県コーディネーターに連絡して来院してもらいます。コーディネーターは家族に臓器提供についての詳しい説明をします。家族は、この時点で家族は説明を聞くだけで、提供が進んでいくわけではないので、これで断っても構いません。またその後、患者が亡くなるどの過程でも臓器提供を断ることができます。一度希望すれば話が決まってしまうわけではありませんので安心してください。臓器提供はあくまで善意で行なうものですので、見返りの金品などはないことをご了承ください。

親族優先提供について

2010年の臓器移植法改正以後、一親等以内の親族に優先して臓器を提供できるようになりました。ただし以下のような条件が必要になります。(一親等以内の親族とは、配偶者、子供、父母を指します)

  1. 提供者は15歳以上で、事前に臓器提供の意思と親族優先提供の意思を書面により表示していること
  2. 移植を希望する親族が臓器移植ネットワークに移植希望登録をしていること
  3. 医学的に移植が可能な条件を満たしているということ
  4. 「親族以外には提供しない」という意思表示であった場合には、臓器提供そのものを行わない
  5. 自死(自殺)患者の場合には、たとえ上記条件を満たしていても親族優先提供はできない。(親族に臓器を提供する目的での自殺を防ぐため)

臓器提供者(ドナー)適応基準

提供できる臓器は、脳死下であれば、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、角膜となり、心停止下であれば、腎臓(膵臓)、角膜になります。一般的にドナーになるには以下の条件が必要です。(提供臓器によって多少条件が異なります)

ドナー適応基準

従って、高齢の方や、癌で亡くなってしまう方、敗血症で亡くなってしまう方は希望があっても臓器提供はできません。また臓器摘出までの過程で、移植医の判断で臓器が移植に適さないとされる場合もあります。

臓器摘出までの流れ

コーディネーターの説明後、家族により臓器提供の書面での了解があれば、移植施設の責任者に連絡が入り、臓器摘出チームが編成されます。摘出チームは提供病院に来院して患者の状態を確認し、摘出の準備に入ります。心停止下提供の場合には、心停止後、臓器保存液を流すための点滴ルートを確保してもよいか家族に確認します。これにより臓器が良い状態で摘出できますが、ベッドの側での小手術が必要になります(カニュレーションといいます)。提出チームが直接家族と顔を会わせることはありません。全ては主治医を介して説明や確認が行なわれます。 準備が整ったら患者が亡くなるのを待ちます。脳死下提供であれば法的脳死判定を行います。(※法的脳死判定は脳死下臓器提供を行う場合にのみ実施されます。複数の専門医により、法的に定まった厳密な状況・手順に則って行われます。時間をあけて2回の判定が行われ、全ての条件を満たした場合のみ脳死と診断されます。2回目の脳死判定終了時刻が患者の死亡時刻となります。)
死亡が確定するまでの間は、必要な治療は継続されます。臓器提供のために治療を中止したり、死期を早めたりすることは絶対にありません。摘出は患者がその命をまっとうした後から始まることです。家族は最後の瞬間まで患者に付き添うことができます。脳死下提供の場合は、脳死判定後に臓器摘出時間が決まります。手術室に搬入されるときに最後のお別れをしてもらいます。心停止下提供の場合、心臓が止まった時から腎臓には血液が流れなくなり、細胞が死んでいきますのであまりに長い時間が経過すると腎臓が移植に適さない状態になってしまします。従って短時間(できれば5分程度)でのお別れをお願いしています。事前に点滴ルートが確保されていれば直ちに臓器の保存液を流して手術室に搬入します(ルートがなければ手術室で開腹後に保存液を流すことになります)。摘出手術の時間は提供される臓器の種類によって変わります。通常は3-4週間ほどですが、心停止下の腎臓摘出などは早ければ1時間ほどで終了します。傷を閉じて体をきれいにした後、家族にお渡しします。死亡後に行われた摘出手術やその他の処置の費用を患者、家族に請求することはありません。その後退院までの流れや手続きは通常に亡くなった場合と変わりません。基本的に、ドナーおよびレシピエントは臓器を誰に提供したか、誰から戴いたか判らないようになっています。レシピエントがドナーにその感謝の意を伝えたい場合は、コーディネーターを通じて手紙などのやり取りを行うことが可能です。