特殊な移植

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特殊な移植

血液型不適合移植

移植の血液型がA→B、B→A、A→O、B→O、AB→O、AB→A、AB→B (ドナー→レシピエント)であった場合を血液型不適合 移植といいます。ドナーの腎臓にある血液型抗原と、レシピエントの血中にある抗A抗B抗体(A型抗原、B型抗原に反応する物質)が反応を起こし、激しい拒絶反応を起こします。そのままでは移植ができないので、術前にレシピエントの抗体を予め除去する処置を施してから移植を行います。
一方、O→A、O→B、O→AB、A→AB、B→ABの場合、血液型は違いますがこの反応が起きません。従って通常の血液型適合の移植と同じように行なっています(これを血液型不一致移植といっています)。現在は、治療の安全性、確実性が向上したため全国の生体腎移植の約30%がこの不適合移植であり、その成績も通常の移植と遜色ありません。また術前の処置が必要になるため、緊急手術である献腎移植の場合にはすべて適合移植で行うようになっています。当院でも2019年9月に1例目の血液型不適合移植を施行し、これまでに50例以上を行っていますが、いずれも術後の拒絶反応はなく経過は良好です。

糖尿病性腎症

腎移植は糖尿病を治す治療ではありません。移植した腎臓にも糖尿病の影響がでることを心配して、以前は糖尿病が原因の透析患者の移植はあまり行われませんでした。しかし現在透析導入の原因第1位は糖尿病患者であり、しかも透析開始後の予後は、他の原因で透析になった患者より著しく悪いという結果があります(10年生存率23%、15年生存率10%)。従って救命の観点からすれば、糖尿病透析患者こそ腎移植が必要ということになります。最近は糖尿病性腎症の移植も全国的に増加していますが、術後厳密な血糖コントロールが必要になります。当院でも移植患者の15%は糖尿病性腎症の患者です。

二次移植、高感作レシピエント

以前に移植を経験して透析再導入になった患者や、SLEなどの自己免疫性疾患が原因の患者は、他者に対する抗体が過剰に産生され反応性が高まった状態になっていることがあります(これを高感作レシピエント:high sensitizerといいます)。この場合、そのまま移植を行うと高頻度で激しい拒絶反応が起こります。従って、術前にドナーとのクロスマッチ検査を精密に行う必要がありますし、結果によっては移植が不可能と判断される場合もあります。血液型不適合移植に準じた処置を行い、抗体を除去することで移植を可能にできることもありますが、術後に拒絶反応を起こして治療に難渋した症例も経験しています。幸い現在全例で腎生着中で透析に戻った方はいません。通常の腎移植であればほぼ問題なく行えるほど移植医療は進歩していますが、この高感作レシピエントについてはまだ克服すべき課題が残されています。

小児腎移植

先天的な影響で幼少期に腎不全に至る子供もいます。血液透析は子供にはつらく、また学校生活との両立も難しいです。腹膜透析を行っている子が多いですが、腎不全の状態が続けば発育不良の原因にもなります。最もよい治療はやはり腎移植です。腎臓だけの問題であれば、移植を行うことでほぼ通常の学校生活を送ることができますし、成長も見込めます。問題は、体がちいさいことで手術や術後管理が難しいことと、ほぼ生体腎移植となるため生体ドナーが必要だということです。現在献腎移植においては小児優先のルールがあるため成人よりはチャンスがありますが、それでも移植を待つ期間が必要になります。当院では主に南部医療センター・こども医療センターの小児科医と連携して小児の腎移植も行っています。ただ技術的体制的な問題もあり、体重30kg以上の子供に限っています。これまで15歳以下の小児の腎移植は5例行い、皆さん元気に育っています。