ドナー手術

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ドナー手術

術前準備

一方ドナーの方の経過を見てみましょう。ドナーは術前特別な準備はいりません。手術に備えて体調を整えておいてください。入院は手術の前日月曜日です。万一、体調不良で手術に支障をきたすようだと移植自体が中止になります。レシピエントは先に手術の準備を行って待っていますが、移植が中止になれば退院して再度予定を組み直し、準備を最初からやり直す必要が生じますのでドナーの体調管理は重要です。麻酔医より全身麻酔の説明を受け(前もって外来で済ませておくこともあります)、下剤の内服を行います。夜から点滴を行い、腎臓がすぐ活発に働くように準備しておきます。

手術当日

8:30前には病棟から手術室に向かいます(レシピエントは8:40頃)。麻酔などの手術準備が行われ、9時過ぎ頃に執刀となります。手術の負担が少なくなるように当院ではカメラを使った鏡視下手術を行っています。臍下に約6cmの皮膚切開をおき、側腹部に1cm大の創を3ヶ所加えて手術を行います(用手補助後腹膜腔鏡下腎臓摘出術:HARS)。腎機能に左右差がなければ、移植に有利な点を考慮して通常左腎を摘出します(腎静脈が長く採取できるため)。手術時間は約3時間で出血は少量です。輸血を行うことはまずありません。術後は外科個室病棟に戻ります。麻酔から覚醒すれば当日から飲水可能ですが、翌朝まではベッド上安静です。食事も出ません。麻酔の影響で術後嘔気を訴えることもありますが、徐々に回復していきます。

移植当日:ドナー1
移植当日:ドナー2
移植当日:ドナー3

術後経過


翌日には離床可能です。食事も開始します。傷は小さくしていますが無痛ではありません。創痛があれば鎮痛剤で対処しますがピークは2~3日くらいです。腎機能保持のため2日目までは点滴を行います。終了後はなるべく水分を摂ってもらいます。スムースに動けるようになれば退院です。早い人で4日目に退院した人もいますが、平均は翌週の火曜日、術後7日目で退院です。創部は吸収糸による埋没縫合を行い抜糸は不要です。 ドナーは元来病人ではないため、手術により健康に影響することがあってはならないと考えています。術後合併症なく無事に退院させることが何より大事です。当院ではこれまでドナーで術中に傷を大きく開ける開放手術に変更した症例は一例もありません。

移植の経過:ドナー

退院後通院

痛みや体調に問題がなければ、早期の日常復帰、仕事復帰は可能です。術後一ヶ月もすればほぼ術前と同様な体の状態になります。ただし腎臓が一つになっていますので、術後の健康管理には気をつけてもらいます。片腎になったからと言って病気になりやすくなることはありません。ただし腎臓に影響する病気(高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病など)になった場合、通常の方よりは注意が必要です。従ってこれらの病気を予防するために、当院では術後専門の腎臓内科医がドナーの定期観察を行っています。これまで術後にドナーが腎不全となった症例は経験していません。また年に一度は外科外来にて創部のチェックもしています。数年も経つと、ほとんどの傷は目立たないほど綺麗に治癒しています。