診療科・部門
消化器外科
概要
当院外科の過去5年間の年間平均手術数は999例でした。2021年度は月平均手術数が89例で、2022年度は1,100例を超える勢いで手術数が増加しています。
当院の消化器外科では、患者さんに安全で適切な手術治療を提供できるように、大腸、胃、肝臓、膵臓の診療グループによる専門領域別に習熟した治療体制を基本としています。治療方針の決定は、主治医と指導医を含む治療グループの話し合いをもとに術前カンファレンスを行い決定します。患者さんにとってよりよい治療を行うために、手術前後の問題点については看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、社会福祉士と連携しながらチーム医療で患者さんの治療にあたります。
特長
がんに対する手術は、可能な限り臓器の正常機能を温存し体にやさしい低侵襲手術を選択しています。また、がん組織を残さず根治する手術を行うことを心がけています。専門領域の外科医が互いにサポートしながら、診断や治療について連携協力して情報交換し、患者さんお一人おひとりに適した治療が行えるように努めています。
また、胆石や虫垂炎、成人の鼠径ヘルニアなどの良性疾患に対する腹腔鏡下手術や、がんに対する化学療法なども数多く実施し、安全で安定した成績の良い治療の提供を心がけています。
治療(手術)
胃がん
胃がんの治療方針は内科と外科で討議したうえで決定します。当院消化器病センターを通じて内科と外科の垣根が低く、日頃から自由な意見交換や治療方針についての論議を行っています。
手術が必要な例には、がんに対する根治性を担保しながら胃が持っている機能をできるだけ温存しようとする幽門保存胃切除術や噴門側胃切除術などの機能温存手術を行っており、大動脈周囲リンパ節転移のあるような高度進行がんに対しては薬物療法でがんの勢いを弱めたのちに(術前化学療法)手術を行っています。基本的に早期がんと比較的早い段階の進行がんには腹腔鏡手術を行い、それより進行したがんには開腹手術を行っています。
また、2024年度からは手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術を開始しました。精密で安全性の高い手術を行うことができ、患者さんにとっては低侵襲で術後の回復が早い、合併症リスクが低いといったメリットがあります。
大腸がん
当院の大腸がん治療は、「大腸癌治療ガイドライン」で示された標準的で適切な治療方針を参考にしながら、患者さんの身体条件、生活環境などを考慮して方針を決定しています。大腸がんに対する手術として主に行われている腹腔鏡下手術には、腹腔鏡下手術を経験した医師が2人以上参加し、十分な根治性を追求し、合併症の少ない手術を行うように心がけています。直腸がんについては、高解像度3D画像を見ながら多関節付き器具で繊細に手術を行うダヴィンチによるロボット支援手術を導入しました。また、進行したがんに対して放射線治療や抗がん剤治療を行うことでがんの切除が可能になったり、予後の延長が見込まれたりする場合があり、必要に応じてそれらに治療を併用し治療成績の向上を目指しています。
直腸がん
直腸がんに対しては、2022年6月からロボット支援下手術「ダヴィンチ手術」を導入しました。
ダヴィンチ手術では、腹腔鏡手術よりも鮮明な高解像度3D画面を見ながら、人間の手の動きを模倣した可動域の広い関節を持った鉗子により繊細な手術操作が可能となり、手ぶれを防止する機能を備えた鉗子の操作により安全な手術が可能となります。
肝臓がん
原発性肝がん、転移性肝がんに対して腹腔鏡下手術を積極的に行っています。腹腔鏡肝切除手術は高度な技術を要するため適応を慎重に判断しています。転移性肝がんについてはガイドラインを参考にしながら外科医、内科医、放射線科医、病理医など多くの専門スタッフで治療方針を検討し、切除が可能で効果的と判断すれば、積極的に肝切除を行っています。がんが大きく切除が困難な場合にも、多くの専門スタッフと検討して治療方針(抗がん剤や放射線治療など)を決定し、定期的に血液検査や画像検査を継続してがんの勢いを抑えて手術するConversion Surgeryも行っております。
膵臓がん・胆管がん・胆嚢がん
当院でのがん治療は、基本的に各がんの診療ガイドラインに基づいて行われます。消化器内科医がERCPやEUSなどの手技を用いてがんの診断を行っています。がんを完治させるためには腫瘍の完全切除が原則です。しかしながらこれらの部位ではすでに進行している症例が多いこと、さらに解剖学的に複雑で手術手技が高難度であること、また大手術となるため手術侵襲が大きく高齢者や合併症がある場合には耐えられないことなどが治療を難しくさせています。
手術については、膵頭部の膵臓がんは、膵頭十二指腸切除術(PD)が、膵体部および膵尾部であれば脾臓合併膵体尾部切除術(DP)が標準術式になります。それぞれ所属リンパ節郭清を行い、近傍の臓器に浸潤が及べば合併切除して可能な限り病変の完全切除を目指します。転移や再発がある症例は、化学療法を組み合わせることで転移・再発症例に対しても切除術を行い治る可能性を追求しています。
実績等
がんの手術症例数(結腸、直腸、胃)
がんの手術症例数(胆嚢、十二指腸、肝臓、膵臓)
腹部疾患の手術症例数(胆石症、虫垂炎、ヘルニアなど)
当院におけるがんの治療成績
大腸がん肺転移切除症例・治療成績生存率
治療(薬物治療・抗がん剤治療)
当院における抗がん剤治療は消化器がん、乳がん、さらには呼吸器がん、婦人科がん、泌尿器科がんの患者さんに対する治療を主に外来化学療法室で行っております。一部のがんや抗がん剤の種類によっては入院にて治療を行う場合もあります。そのなかでも外科においては、大腸がん・胃がん・食道がん・膵臓がん・肝臓がん・胆管がんなどの消化器がん、さらには乳がんの患者さんに対して各分野の専門医が抗がん剤治療を行っています。
当科で実施している抗がん剤治療は、日本国内で行われている標準治療を統一して実施しています。
標準治療とは、それぞれのがん種別においてがん専門学会が提供しているガイドライン(治療指針)に準じた治療法のことです。さらにガイドラインに記載がなくても有効な治療でありそれぞれの学会が認めた抗がん剤であれば、いち早く実施可能な体制を常に整えております。
以前は抗がん剤治療を行っても治療効果が低く、副作用が強くてつらいだけの治療というイメージがあり、実際そのようなことが多かったと思います。
しかしながら、近年の抗がん剤治療薬の進歩は目覚ましいものがあり、さまざまながんにおいて生存期間の延長を認める治療法が増えています。治療をスムーズに行えるように副作用対策も以前に比べると進歩しています。当科においても抗がん剤治療が安全かつ有効に行えるように、副作用や合併症への対策にも配慮しながら治療を行なっています。
そのために抗がん剤を行う専門医師のみならず、緩和ケア専門医や看護師(緩和ケア認定看護師、がん薬物療法認定看護師)や薬剤師(がん薬物療法認定薬剤師)、心理士といった多くのがん専門スタッフが協力しあい、患者さんの抗がん剤治療がきちんと行えるよう努めています。
実績
緩和ケア
当院では緩和ケアチームが早期からの緩和ケアを提供しております。早期からの緩和ケアとは、がん診断の早期や、がん治療の過程で必要となるケアです。患者さんの気持ちのつらさに対する精神的なケアや、治療に伴う身体的な苦痛を緩和する支持療法(サポーティブケア:抗癌剤治療や放射線治療の際に生じる副作用に対する治療など)、社会的問題に対するサポート(在宅療養の支援、経済生活に関する情報提供など)がこれに含まれます。
「緩和ケア」=「終末期ケア」というイメージを持たれる方も多いかと思いますが、緩和ケアは「病気に負けたから受けるもの」ではなく、「治療と並行して、ご自身のこれまで大切にしてきたもの(家族、仕事、趣味 、考え etc.)をこれまでと同じように大事にしながら、どのように人生を過ごしていくかを考えるためのお手伝い」と考えていただけたらと思います。 気軽に、肩の力を抜いて、雑談をするように、お話させていただけたらと思います。あなたと、あなたの周りの大事な方たちと一緒に、より良い人生のために一緒に考えていきましょう。
Acute Care Surgery(外科救急科)
Acute Care Surgery部門は急性期外科の分野を担当します。外傷、急性腹症による緊急手術、出血に対する外科手術、腹部コンパートメントやNOMIなど外科のなかでも特に緊急手術で幅広い分野をカバーします。
若い外科医を育て、沖縄の地域医療に貢献できる医師を輩出するために、幅広い外科の手技、考え方、治療法の教育にも役立つ重要な分野です。
今後の沖縄の医療に貢献できるよう、当院救急科やICUとも協力し病院の前線に位置する外科の医師育成に貢献致します。