がん性腹水治療センター

当院の取り組み

がん性腹水治療センター

がん性腹水治療センター

がん性腹水とは

がん性腹水の原因

  • 腹水がたまる原因の1つとして、がん性腹膜炎によって体液が漏れ出すこと、肝臓の働きが弱まって血中蛋白質の1つであるアルブミンが少なくなること、肝臓、心臓、リンパ系に異常がある場合に腹水を排出するポンプ機能の働きが悪くなるなど、様々な原因が考えられています。

がん性腹水の問題

  • 腹腔内を満たしている腹水は、通常は血管やリンパ管を通じて血液に戻ることで一定量が保たれますが、がんが進行した終末期の患者さんではこの機構がうまく機能せず腹腔内に大量の腹水が溜まって胃、腸、腎臓などが圧迫することによる腹部膨満感や食欲不振、腎機能の低下や、横隔膜を押し上げることで肺や心臓が圧迫することによる呼吸困難などを引き起こし、がん患者のQOLを大きく低下させるとともに、がん治療の継続にも支障を来すことがあります。

改良型CARTとは

これまでの処置と問題点

  • 利尿薬に反応しない難治性腹水に対し、腹腔穿刺による腹水ドレナージが第一選択の治療法として位置づけられていましたが、腹水を急激に抜くと循環血液量が減少して血圧が下がり、ショック状態や急性腎不全を招く危険があります。さらに、ドレナージを繰り返すことで血漿蛋白濃度が低下して全身状態が急速に悪化し、腹水がますます溜まりやすくなる悪循環に陥ることがあります。
  • また、腹水にはアルブミン(栄養)やグロブリン(免疫)などが大量に含まれており、腹水を抜くと栄養状態だけでなく免疫機能が急激に低下し、特に終末期では致命的な影響を与える可能性もあり、腹水の治療は敬遠されるようになりました。
  • 1981年に保険適用された腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CART)は、腹腔内から抜いた腹水を特殊なフィルターで濾過し、必要な蛋白成分を濃縮して静脈内に戻す治療法で、患者への身体的負担が非常に少なく、さらに静脈内に戻された蛋白成分によってがん治療効果があらわれることがあります。しかし、がん性腹水は血球成分やがん細胞などの細胞成分が多く含まれていることからフィルターはすぐ目詰まりを起こしてしまい、そのためローラーポンプで無理に押し込み濾過する際に腹水中のがん細胞をすり潰したり、白血球に過度の物理的なストレスが加わってインターロイキンなどの炎症物質の増加によって患者が高熱を発するなどの問題がありました。

改良型CART技術とは

改良型CART技術とは、がん性腹水の苦痛を緩和し、患者のQOLを大きく改善できる治療法。がん性腹水治療に従来使用されていたCART法の問題点が改良されたことで、大量の腹水でも安全に抜くことが可能となりました。これにより腹圧を軽減させると同時に、必要な蛋白質が回収できることで血漿膠質浸透圧の上昇、循環血漿量の増加、腎臓や消化管血流の改善、下肢浮腫の軽減が可能となります。

改良型CART技術のポイント

改良型CARTシステム図

① 濾過膜を内圧方式から外圧方式に変更

  • 濾過のしくみについて、腹水をフィルターの内側から外側に押し出す内圧式から、逆に通す外圧式に変更されたことで濾過膜面積が広がり、濾過能力がアップしました。

② 濾過膜の閉塞が容易に回復する膜洗浄機能を追加

  • フィルターの内側から外側に向けて生理食塩水をフラッシュして膜を繰り返し洗浄することで、目詰まりの問題が解決されました。

③ 一般的な輸液ポンプと吸引器を使用

  • 従来のローラーポンプを使用しないことで腹水に機械的なストレスがかからず、発熱の原因であった炎症性物質の産生が少なくなりました。

効果と適用

改良型CART技術の効果

  • 改良型CART技術によって1回で20リットル以上(最大27リットルの報告あり)の腹水を処理できるようになりました。
  • 処理時間も従来法は1リットルの腹水をろ過・濃縮するのに30分から1時間ほどかかっていたが、改良型CART技術なら10分程度で処理できます。
  • 大量腹水でも改良型CART技術により安全に全量を抜く事が可能となりました。

改良型CART技術の適応

  • 改良型CART技術の適応は、水分・塩分制限、利尿薬などで改善しない難治性腹水症です。従来システムでは禁忌になっているエンドトキシン症例も、改良型CART技術の腹水にストレスを加えない構造によって95%以上が除去されており、安全な治療が可能となりました。<br>※エンドトキシンとはグラム陰性菌の細胞壁を構成する成分の1つで、自然界に存在する最も強力な発熱性物質として知られています。
  • 従来方式では慎重適応となっている高ビリルビン血症(黄疸)症例に対しても安全に施行することが可能です。
  • 当院ではがん性腹水のみ施行します。

外来のご案内

医師紹介

婦人科がん性腹水

大城 大介
Oshiro Daisuke

婦人科以外のがん性腹水

花城 清俊
Hanashiro Kiyotoshi

がん性腹水の患者さん専門の外来となります。

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  • 当院は予約制です。
  • 現在当院でがん治療中の患者さんは当院主治医にご相談ください。
  • 当院以外の医療機関で治療中の方は主治医にご相談のうえ、当院を予約してください。

関連リンク

実績

当院のがん性腹水治療は、2020年12月の開始から数えてすでに4年目を迎えています。
患者さんは沖縄県南部を中心に八重山諸島を含む沖縄県全域に及び、本州から来院される方もいらっしゃいます。

CART実施患者数 250件(2023年12月まで)

月平均6.5件

学術発表

  • ① 第81回沖縄県外科会(2021年5月16日)『当院におけるKM-CARTの治療成績』花城清俊(外科)
  • ② 第1回UIC-net講演会(2021年11月22日)『胃癌腹水治療の最前線』花城清俊(外科)
  • ③ 第18回CART研究会学術集会(2021年11月27日)『腹水貯留の速い患者に対する外来での腹水冷蔵保存の試み』
    花城清俊(外科)
  • ④ 第18回CART研究会学術集会(2021年11月27日)『当院におけるCART、KM-CARTの有用性の比較』大城智彦.
    (臨床工学士)
  • ⑤ 沖縄CART講演会(2022年5月27日)『当院におけるKM-CARTの現況』花城清俊(外科)
  • ⑥ 第7回UIC-net講演会(2022年7月21日)『当院で導入した改良型CARTの現状と臨床症例』花城清俊(外科)
  • ⑦ 第7回UIC-net講演会(2022年7月21日)『改良型CARTにおける腹水処理の実際』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑧ 第19回CART研究会学術集会(2022年12月3日)『癌性腹水の改良型CARTに於けるマスキュア膜と従来のAHF
    膜4症例の比較検討』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑨ 第17回九州・沖縄臨床工学会(2023年1月14日)『改良型CARTにおけるマスキュアの使用経験』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑩ 第95回日本胃癌学会総会(2023年2月24日)『当院における胃癌を含むがん性腹水治療患者に対する改良型CART75例の治療成績』花城清俊(外科)
  • ⑪ 第95回日本胃癌学会総会(2023年2月24日)『胃癌の癌性腹水症例に対する改良型CARTの有用性』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑫ 第1回沖縄CART研究会(2023年4月7日)『改良型CART(KM-CART)について』花城清俊(外科)
  • ⑬ カネカ主催勉強会 マスキュアを使ってみた~マスキュアのここが良い!ここが惜しい~(2023年5月18日)『当院のCART治療) 大城智彦(臨床工学士)
  • ⑭ 第2回沖縄CART研究会(2023年11月10日)『CARTにおけるドレナージ腹水量の検討』花城清俊(外科)
  • ⑮ 第2回沖縄CART研究会(2023年11月10日)『CART時に心不全を来した1例』冨永美緒(4北病棟看護師)
  • ⑯ 第2回沖縄CART研究会(2023年11月10日)『腹水穿刺後の腹痛の対応』我喜屋瑞生(6北病棟看護師)
  • ⑰ 第2回沖縄CART研究会(2023年11月10日)『当院におけるマスキュア膜の選択基準』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑱ 第20回CART研究会学術集会(2023年12月9日)『改良型CARTにおけるマスキュアの使用経験』大城智彦(臨床工学士)
  • ⑲ 第20回CART研究会学術集会(2023年12月9日)『低温保存腹水を使用したCS-CART、18名36症例の経験とそれを応用した1例』花城清俊(外科)